苦しむ顔と、逝く時の顔(その4)
そしてとうとう、リョウが来ました。
美しい。リョウを見るたびにやはりそう思わずにはいられません。
いつもだったら、リョウの笑顔に見惚れている私がいるはずでした。
でも、この日は2人とも少し様子が違いました。
私は胸を押さえておもわず俯いてしまいました。
咽喉が渇いて、興奮して頭に血が上っていました。
苦しい・・・それがリョウをみて最初に感じた感情でした。
リョウもいつもの笑顔はありませんでした。
冷たく冷淡な流し目で私を一瞥しました。
もちろん、それはわざとしている事はわかっていました。
でも、マゾに堕ちていた私は、将にその冷たい目に
余計に酔ってしまいました。
私達は視線を合わせないようにして、部屋に入りました。
部屋に入れば最初にすることは抱擁です。
それは、リョウがいつもして欲しいと望むことでした。
それをするのは私の役目でした。
でも、昨日のメールでそれをすることは禁止されていました。
目の前にいるのは、昨日KBに抱かれたリョウなのです。
これから私が愛するリョウではないのです。
リョウは一切笑顔を見せませんでした。
見せたのは冷笑だけでした。
美しい顔は人を幸福にすると同時に、こんなに人を
苦しめることにも使えるのだと思えるほど冷たい目でした。
私はドアの前にたたされました。
リョウは私の目の前に立ち、そして私の体をまさぐり始めました。
私は何もできずただ立ち尽くしていました。
本当はギュッと抱きしめたいのをひたすら我慢して。
そして、リョウの責めをじっと待つだけでした。
(つづく)
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