この日、リョウが大荷物で部屋に入った理由はこの浴衣に縄をかけるためでした。
既に数度目の緊縛写真。私もだいぶ手馴れてきて縄を捌くのも段々うまくなってきました。
前回の緊縛で、新しい世界に入ってしまったリョウは後ろ手にして手首に縄をかけるまでは冗談を言ったりしていましたが、胸の前に縄が巻かれていくと急に言葉数が減っていきました。
1本目の縄で両手の動きが封じられて、2本目の縄で脇の動きが封じられます。
上半身の自由が立った2本の縄で簡単に封じられたリョウは、同時に言葉も封じられてしまったかのようでした。
写真を撮るために少しリョウから離れて全身を見ました。
美しい。本当に美しい。
素裸に縄をかけると少しどぎつい感じがするのですが、こうして着衣の状態で縄をかけるとなんともいえない美しさを醸し出すものです。浴衣の上に、というのも非常に美しさを際立たせている感じです。
「そこで、立って。うん、こっち向いて。そう。綺麗だよ」本当はもっと自分の目で鑑賞したいのを少しこらえて私はファインダー越しにリョウを見つめます。
縄をかけたリョウは、少し表情が硬くなってしまいます。
少なくとも満面の笑顔が消えてしまうのです。
それが緊張によるものなのか
興奮によるものなかの
怖さによるものなのか
それとももっと全然異質の感覚によるものなのか
私はまだ理解できていません。
ただしピンと張り詰めてくるこの感じは、私にも作用して2人だけの空間を作り上げていく為には必要なものなのだと思います。
(つづく)
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