「キスは禁止」と事前に言っておいたので
藍からの、いつものようなキスは無い。
Tシャツと下着を身につけているだけの姿になって
私の前に、立っている藍。
どうしたらいいのか戸惑っているかのような
私からの指示を待っている飼い犬のような
そんな表情で、ずっと私の側にいる藍。
手を、そんな藍の方へ伸ばす。
愛しい者を抱きしめる手で、藍の頭を引き寄せ
愛しい者を抱き寄せる腕で、藍の身体に腕を回す。
耳元で、わざと息を吹きかけるように聞く。
「どうされたい?」「いじめてほしい・・」「誰に?」「リョウ・・リョウに、いじめてほしい・・」少し肩を乱暴に掴むようにして、密着していた身体を離す。
睨むように、見下すように目を見て、きつい口調で間髪を入れず、問う。
「女王様には会わなくていいの?」ふと、緊張が解けたように、それでも自分の意思が固まったのに安心したのか
「リョウに、してほしい」と小さく呟き、藍は脱力してしまう。
それを聞いて、私も覚悟を決める。
今日は女王様じゃない。この私が、藍を責めるのだと。
(つづく)
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