「今日は記念日だね」という私に
「あの日だったらよかったのに」と返すリョウ。あの日というのは2人だけがわかる日のことです。
愛しい、どうしようもないほど愛しい。
私は何度も何度もリョウをベッドの上で抱きしめました。
まどろんでいるうちにリョウは数分間、事後睡眠に落ちたようです。
「リョウ、リョウ、時間だよ。起きて」「ねたい、ねむい」本当は、腕枕のまま寝せて上げたかったのですが、タイムリミットは目の前に迫っています。
「ほら、もう**分しかないよ。急いで!」リョウも時間を聞いてあわてて帰り支度をします。
帰り際はいつもこうなってしまいます。
ぎりぎりまで2人の時間に浸るのがいけないのですが。
身支度をしてホテルを出て一緒に歩いていると、リョウの頬はまだ興奮冷めないようで真っ赤なままでした。
私は意地悪を言いました。
「頬、赤いよ。どうしたの?」リョウは半分微笑みながら、はずかしそうにしていました。。
「逝ったからでしょ(笑)」「ううん、叩かれたから(笑)」「嘘だよ、叩かれてからは随分時間たってるもん(笑)」「ううん、叩かれたから(笑)」リョウは何度かつまずいて私によっかかってきました。
やはり・・・まだ足元がふらついているようです。
体が言うことを利かないのでしょう。
冗談を言い合いながら、時にきわどい会話をしながら仲良く2人で歩きました。
あっという間に別れの場所に来ました。
「じゃ、またね。」「うん、またね。」車に乗り込むリョウ。
あ・い・し・て・る
と声を出さずに口を動かすと、リョウも
あ・い・し・て・る
と口を動かしました。
見えなくなくなるまでずっと、私はリョウに手を振っていました。
長い長い逢瀬の終わりでした。
「初めての・・・」 シリーズ一覧
最近のコメント